菅谷李径先生インタビュー



平成22年3月けいこ風景





3.教室点描

書道をやるということはね、大事なことは一にも二にも、楷書なら楷書、行書なら行書と基本的なことを先生が書いて、あとは練習ひとすじしかないと思うのよ。それで何年かやっている人はね、初めから思えば、した甲斐が無いなんて絶対ないです。

基本が一番大事。

いつも手本を見てばっかりじゃなく手紙を書かせるのよ。
そのためにペン習字帳を作っているの。それに表紙をつけて、その表紙に『つれづれぐさ』だとか『思いのままに』、とかいろいろ題をつけてね。一人で四冊ずつ持たせるの。
私がペン字でね、お手本を書く。百人一首とか、牧水・啄木の詩とか、百人一首だったら一人三首まで、あとは王堂先生の本だとかを参考にしたりして。
手紙もこの頃書かないものだから、はがきにでもなんにでも書けるように、詩・短歌なんかをかっこよく帳面に書いてあげるのよ。
こちらのページに手本を書いて反対側に清書をするようにね。
一遍じゃお習字にならないから自分の紙に練習をして、清書をしてくださいというふうに。それを二冊ずつ交互に宿題にしています。
そして、一筆箋のような物にとっても上手になったとか、面白いことを書いて挟んでやるのよ。そうするとその人が同じ物に、先生に誉められてうれしかった、ここんとこは、こういう風に苦労したけどどうでしょうかとか書いてくるの。手紙の字をみてね、これがこの人の今の値打ちだなあと思ってあげるの。自分の頭から出た文章を自分の字で書くのはとても良い修行になるの。その字が今までよりもものすごく上手になって。
この頃はペンを忘れているっていうの。パソコンを使ったり、必要なことを書くだけにペンを使ってもね、これという文章を書くことがなくなっているから、これはとても良い修行になるの。
おけいこが終わってから、手紙のことをいうと、私もそう思ってたのよ、なんて…。

私が人の役に立ちたいといったらね「先生、ほんとですか。だったら私見つけてきます」ってグループホームのボランティアを、弟子がみつけてきてくれたんだ。他にも是非にと頼まれて、二ヶ所ボランティアに行ってるの。もう五年になるけど一度も休んだことがないの。
高槻の教室で教えてた38年も続いている弟子がね、80にもなるの。ほんとになにもかも御存知、お互いにね。その弟子が、毎回付いていってくれる。他にもう一人、これは当番を決めて。1軒はここまで車を入れてくれる約束、もう1軒はタクシーで送り迎え、タクシーの運転手がここまてついて来てくれる。そいだから続くのよ。
介護の現場に行くとね、これは愛がなければできない仕事だと思う。
もっともっとお給料あげたい、と私思う。
これは本当に愛がなければできない。
だから、私も自分にできることをしたいと思う。

生きているかぎりは、役に立ちたい。この年になっても役に立ったり、人からあてにされて、幸せだよ。

 

4.人生の転機は? へ続く。