読み方
暝 ( めい ) 煙は林を蒙 ( おお ) いて薄く、綿綴 ( てつ ) せり巨川の涯 ( みぎわ ) に。忽 ( たちま ) ち犬の吠 ( ほ ) ゆるを聞ける処に、茅 ( ぽう ) 屋の両三家あり。
                             ― 古賀精里作、澱 ( でん ) 舟にて ―
通釈
夕方の小暗いもやは、林をうっすらとおおい包んで、大きな淀川の水辺に細長く続いている。突然に犬が吠えているのを聞いたが、その方向の処に、かやぶき屋根の家が二、三軒見えた。
語釈
古賀精里 (1750~1817  江戸後期の儒者。寛政の三博士の一人。 ) 澱 ( 淀川。澱舟は淀川くだりの舟。 ) 暝煙 ( 夕ぐれの暗いもや ) 蒙 ( おおいつつむこと ) 綿綴 ( 横に細長く続くさま ) 涯 ( みぎわ。きし ) 茅屋 ( かやで屋根をふいたそまつな家 )

【講評】 鍛錬の跡の窺える卓抜した作品です。