読み方 |
大火は已 ( すで ) に西に流れて、郊墟 ( きょ ) に涼気浮かびたり。暑さは残りたれども梧 ( ご ) 葉の雨は、洗い出せり一天の秋を。
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徳川光圀 ( みつくに ) 作、立秋の雨
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通釈 | 猛暑は、もはや西方に流れ去って、いなかには涼しさが漂い始めた。それゆえ、暑気はまだ残っていたが、青桐の葉に降る雨は、今までの夏の空をすがすがしく洗い流して、空一面の秋の趣を現し出したのであった。
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語釈 | 徳川光圀 (1628~1700 第二代の水戸藩主。水戸黄門とも称される。尊王の精神厚く、文京を盛んにし、自らも「大日本史」その他を著わした。 ) 立秋 ( 二十四節季の一。秋の初め。新暦の八月八日ごろ。 ) 大火 ( 炎暑。酷暑 ) 西 ( 西は四時では秋に配されている。 ) 郊墟 ( 野や丘。いなか ) 梧葉 ( 青桐の葉 )
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【講評】 気宇の博大な申し分の無い作品です。