読み方
山中相 ( あい ) 送ること 罷 ( や ) みて、日暮 柴 ( さい ) 扉を掩う。春草明年緑なるも、王孫帰るや帰らざるや。                                              ― 王維作、送別 ―
通釈
友人を山中まで送り、尽きぬ 名残 ( なごり ) を胸にいだいて手を分かった。さて夕暮れ我が家に帰り、 柴 ( しば ) の戸をしめて、いろいろと行く末のことを考えて見るのに、明春になれば草は再び緑色に 萌 ( も ) える だろうが、しかしわが友は一度ここを出たあとで、また帰って来るかどうか分からないのだ。
語釈
王維 (699 ― 759  中国盛唐の詩人・役人。山水画に巧みで、のちの文人画の始祖と仰がれている。 )  送別 ( 旅立つ人を見送ること。 ) 柴扉 ( 小さな雑木で作った開き戸。 ) 王孫 ( 貴人の師弟を意味するが、相手に対する尊称としても使われており、友人のことをいっている。 )

【講評】 字形・線質ともに一頭地を抜いた作品です。