読み方
白桜は白雪を飛ばして、門径は落花に没せり。広寒の余香を照らすは、 尚 ( な ) お ( せん ) 渓の月に勝れり。                      ― 谷 麋山 ( びざん ) 作、風前の落花 ―
通釈
山桜の花は風に吹かれて、白雪のような花びらを飛ばすので、門前の小道は落花の白雪に埋まってしまった。 月が落花の白雪に残る移り香を照らす景趣は、かつて王子猷がほめたたえた渓で眺めた月の興趣よりも、ずっと すぐれているのであった。
語釈
谷麋山 ( 江戸中期の漢学者。阿波の人 )  白桜 ( 山桜 ) 門径 ( 門前の小道 ) 広寒 ( 月の異名。ちなみに、月中に宮殿があると信じられ、それを広寒宮と称した ) 余香 ( 移り香 ) 渓 ( 中国浙江省の天台山の近くにある渓谷 )

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