読み方 |
「
金波は天井を 涵 ( ひた ) し、 玉兎 ( ぎょくと ) は中江を走る。 岸樹は秋気を 似 ( しめ ) して、涼を送りつつ船窓に入る。 ― 尾藤 ニ洲 ( にしゅう ) 作、夜 淀 ( よど ) を下る口占
― 」 |
通釈 | 月光に照らされて、黄金色に見える淀川の波は、大空を、波の中にひたしてぬらし、月は川の中を走っていく。両岸の木々は秋の趣を示して、涼味を送っているのが、船の窓からよく見える。 |
語釈 | 尾藤二洲 (1745 ― 1813 日本江戸時代後期の儒者。伊予の人。昌平 黌 ( こう ) の教官となる。 ) 下淀口占 ( 淀川を船で下った時の口ずさみを詠じた作 ) 涵 ( 水に入れてぬらすこと ) 玉兎 ( 月の異名。月の中にうさぎがいるという伝説に基づく ) 中江 ( 川の中 ) 似 ( 示すこと )
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【講評】 一点一画をゆるがせにしない卓抜した作品。