読み方
「 銀地秋月の色、石梁 ( りょう ) 夜渓の声。誰 ( たれ ) か知らん屐 ( げき ) 歯の尽きたるは、煙苔 ( たい ) を破りて行くが為 ( ため ) なるを。                      ― 徐 ( じょ ) 疑作、天台独夜 ― 」
通釈
「 秋の月に照らされた地面は銀白色となり、石橋の夜、谷川の音が響いている。山下駄の歯が擦り切れてしまったのは、もやの中、こけを踏みつつ散策を続けたためである。 」
語釈
「 徐疑 ( 813 前後。中国中唐の詩人 ) 天台 ( 天台山のことで、仏教の聖地であり、有名な国清寺をはじめとして山のあちこちに寺院が建てられている。 ) 独夜 ( 一人寝の夜 ) 石梁 ( 石橋。天台山の渓流には石橋がかかっており、景色が良い ) 誰知 ( 誰が知ろうか。実は…だからだ。 ) 屐歯 ( 下駄の歯 ) 煙苔 ( もやにおおわれたこけ ) 」

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