読み方 | 「
漢国山河在り、秦(しん)陵草樹深し。暮雲千里の色、処(ところ)として心を傷(いた)ましめざるは無し。
」 ―
荊(けい)叔作、慈恩塔に題す
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通釈 | 漢代の都長安のあたりには、山や河が昔のままに残っており、秦の始皇帝の陵には、草や木がうっそうとおい茂っている。夕暮の雲がさびしげに見え、見渡すかぎりの暮色である。どこを見ても、心を悲しませない所はない。 |
語釈 | 荊叔 ( ?―?年代。事跡は不明。晩唐の詩人とされる。詩はこの五絶(「慈恩塔に題す」の一首のみが伝わる)慈恩塔 ( 長安の郊外、曲江のほとりにある慈恩寺の塔。大雁塔ともいう ) 題 ( ある事柄について述べること ) 漢国 ( 漢の時代の都、長安。国は首都 ) 秦陵 ( 秦の始皇帝の墓 ) 暮雲 ( 夕暮の雲。夕焼けして、悲しみをさそう色彩 ) 千里色 ( 見渡す限り夕暮の色あいである ) 無処 ( そういう場所はない )
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【講評】 錬磨の後の窺がえる卓抜した首席作品です。