読み方
「 一枕 ( ちん ) の清霜涼月、五更の荒角残鐘。夢は断つ杏 ( きょう ) 花の江閣、眼 ( め ) は明らかなり苜 ( もく ) 蓿 ( しゅく ) の辺烽 ( ぽう ) 。                    ― 裴 ( はい ) 景福作、玉門早 ( つと ) に発す ― 」
通釈
「 一寝入りするうちに清らかな霜が降り、寒々と月が輝いた。明け方を知らせる角笛が物悲しく鳴り、水時計の水も残り少ない。あんずの花の咲く川のほとりのたかどので遊宴する楽しい夢が覚め、眼にはっきりと見えるのは、うまごやしの原にあるのろしを打ち上げる台である。 」
語釈
「 裴景福 (? 〜 ? 。中国清代の詩人 ) 玉門 ( 玉門関。今の甘粛省敦煌県の西にある関所の名。昔、西域に通じる交通の要点。 ) 一枕 ( 一寝入りすること ) 五更 ( 明け方。午前五時ごろ ) 荒角 ( もの悲しい角笛。時刻を知らせる。 ) 残鐘 ( 残り少ない水時計の音 ) 杏花江閣 ( あんずの花咲く川のほとりのたかどの ) 苜蓿辺烽 ( うまごやしの生えているあたりにあるのろし台。うまごやしは、まめ科二年草で、牧草と肥料に適する。クローバーの一種である。 ) 」

【講評】 不断の錬磨が物を言った秀抜した作品です。