読み方
「 萱 ( けん ) 草堂 ( かい ) に生じ、遊子天涯を行く。慈親堂門に依 ( よ ) り、萱草の花を見ず。
                                                ― 孟 ( もう ) 郊作、遊子 ― 」
通釈 萱草が母のいる部屋の外の階段に生えた。旅をしている息子は、はるか遠い所にいる。愛情深い母親は部屋の門口にたたずんで、憂いを忘れるという萱草が花をつけても見ようともしない。
語釈
孟郊 (751 ― 814  中国中唐の詩人・役人 ) 遊子 ( 旅人。旅をしている息子 ) 萱草 ( かやくさ。わすれぐさ。食べると憂いを忘れるという。ゆり科の植物。むかし中国では母の居る北堂の庭に萱草を植え、母の憂いを忘れさせようとしたので、母親の居室を萱堂という ) 堂 ( 母のいる部屋の外の階段 ) 天涯 ( 天の果て。非常に遠い所のたとえ ) 慈親 ( 愛情深い親。ここでは母親 )

【講評】 不断の習練の跡の窺がえる見事な首席作品です。