読み方 「高濤 ( とう ) 天地黒く、急雨蛟 ( こう ) 竜を躍らしむ。須 ( しゅ ) 臾 ( ゆ ) にして雲月を吐き、舟は入る喜望峰。」 ― 勝海舟作、五絶 ―
通釈 高い波が押しよせ空も海もまっ黒で、はげしい雨は竜を躍り狂わせるかのようである。まもなく雲間から月がのぞき、舟は喜望峰へ入ってゆく。
語釈 勝海舟 (1823-1899  幕末の旗本。明治の政治家。西郷隆盛と会見して江戸城の平和的明け渡しを実現した功労者 ) 五絶 (五言絶句。漢詩の形式を題としている)
高濤 ( 高い波 ) 急雨 ( はげしい雨 ) 蛟竜 ( 竜。蛟も竜の一種 ) 須臾 ( まもなく。しばらくして ) 喜望峰 ( アフリカの南端にあり、航路の好目標となる岬。勝海舟は安政六年、遣米使節に随行し、咸臨丸艦長として太平洋を渡ることになった。彼は岐路をアフリカ南端周りとすることを夢見て、この漢詩を作った。しかし、この希望は実現せず帰路も太平洋であった。 )

【講評】 結構整斉、線質優秀な非の打ち所の無い作品。