読み方 | 「
渡口春潮静かに、扁 ( へん ) 舟柳陰に半ばす。漁翁眠り未 ( いま ) だ覚めず、山色江に入りて深し。」 ―夏目漱石作、春日偶成 ― |
通釈 | 渡し場に春の日の流れは静かで、柳の木かげに半ば隠れた小船が見える。年老いた漁師はまだ目をさまさず、 川の水面には山の姿が深くひたされている。 |
語釈 | 夏目漱石 (1867 ― 1916 。英文学者・小説家・俳人。名は金之助。東京の人。漢詩もよくした。 ) 偶成 ( 思いがけなくできること ) 渡口 ( 渡し場 ) 潮 ( ここでは海の潮流ではなく、川の流れのこと。 ) 扁舟 ( 小舟 ) 山色 ( 山の景色 ) |
【講評】 錬磨の後の窺がえる見事な首席作品です。