読み方
「 此 ( こ ) の地燕 ( えん ) 丹に別る。壮士の髪冠を衝 ( つ ) く。昔時の人已 ( すで ) に没して、今日水猶 ( な ) お寒し 」         ―駱 ( らく ) 賓王作、易水の送別 ―
通釈
ここ易水のほとりで、荊軻 ( けいか ) は燕の太子の丹に別れた。その時勇ましい男である荊軻の髪は、怒りのために逆立ち冠を突き上げた。あれから九百年、当時の人々はもういない。易水だけが今もなお、寒々と流れている。
語釈
駱賓王 (640? ― 684? 。中国初唐の詩人・役人 ) 易水 ( 中国河北省の易県付近から流れ出る川 ) 燕丹 ( 戦国時代の燕の国の太子の丹をいう。丹が人質として秦の国に行った時、後の始皇帝である秦王政の処遇がひどかったので、これを恨み、秦王暗殺を荊軻に依頼した ) 壮士 ( つわもの。勇ましい男 ) 髪衝冠 ( 頭髪が逆立って冠を突き上げること憤怒のはなはだしい形容 )

【講評】 鍛え抜かれた線質が物を言った作品です。