読み方
香荷麝 ( じゃ ) を散ずるかと疑い、風鐸 ( たく ) 琴を調うるに似る。覚えず清涼の晩、帰人柳陰に満つ。」
                                                     ― 李遠作、慈恩寺の避暑 ―
通釈 においのよい蓮は麝香をまき散らかすかのようであり、風に揺れる鈴の音は琴を演奏するかのようである。
寺の清らかな夕暮れ、家に帰る人も帰るのを忘れて柳の木かげに集まっている。
語釈
李遠 (802-870?。中国晩唐の詩人・役人 ) 慈恩寺 ( 唐の高宗が太子のとき、亡き母親文徳皇后のために、 長安城内に立てた大寺院雁塔と称される有名な塔がある ) 香荷 ( においのよい蓮 ) 麝 ( 麝香。麝は鹿に似た動物でその雄の腹部からとった香料を麝香という ) 風鐸 ( 軒の下に懸ける鈴 ) 調 ( 演奏すること ) 帰人 ( 家に帰る人 )

【講評】 筆路に磨きのかかった秀抜した首席作品です。