梢聳 ( そび ) えて寒声を振い、青葱 ( そう ) 暮色に標す。疎葉嶺を望んで斉 ( ひと ) しく、 喬 ( きょう ) 幹雲を凌 ( しの ) いで直し。 ― 沈 ( しん ) 約作、寒松 ―
伸びた梢からは寒々とした風の音が響き、青々としたその姿が夕景色に映える。 まばらな葉が峰々に向かってひとしく伸び、高い木の幹はまっすぐに雲を超えている
沈約 ( 四四一―五一三。中国梁代の詩人・役人六朝時代を通じて屈指の学者といわれた ) 寒声 ( 寒々とした音 ) 青葱 ( 青々とした様 ) 標 ( 高くかかげること ) 喬幹 ( 高い木の幹 ) 凌雲 ( 雲を越えること ) 直 ( まっすぐなこと )
【講評】 優れた結構、鍛錬を経た線質が物を言った。