読 み方
「 韓国山河在り。秦陵(しんりょう)草樹深し。暮雲千里の色。処として心を傷(いた)ましめざるは無し。                    ― 荊叔(けいしゅく)作 慈恩塔に題する詩 ― 」
通 釈 このあたりはかつて秦・漢の隆盛を極めた地であるが、今やいずれも滅亡して、漢国の面影として存するものはただ山河あるのみ。秦の始皇帝の陵墓も荒れはてて、いたずらに草 木がうっそうとおい茂っている。人の世の盛衰興亡は一時のことで、誠にはかないものである。見渡せば千里の間、さびし げな暮雲の色につつまれ て、いずれも心を悲しませないところはない。
語 釈
漢国(漢代、国都は長安) 秦陵(秦の始皇帝の陵墓。長安の近くにある。) 荊叔(伝記その他いっさい不明である。) 慈恩塔(長安の郊外にある慈恩寺の塔。唐初に建てられた。)

【講評】 形、線質、気脈どれも優秀。よって一席。