読み方 落日五湖に遊ぶ。煙波処々に愁う。浮沈千古の事、誰と与 ( とも ) に東流に問わん。
                                         ― 薛瑩 ( せつけい ) 作、秋日湖上 ―
通釈
日暮れになって太湖に舟を浮かべて遊ぶと、水面には茫 ( ぼう ) 々たるもやがたち込めて、往 ( ゆ ) くとして愁いを催させない処はない。浮沈興廃まことにさだめのなき人生の事をば、誰と共に東流の水に問いかけようか。実に千戸変わらぬものは、東に向って悠然として流れるこの水ばかりである。
語釈
薛瑩 ( 中国晩唐の詩人 ) 五湖 ( 中国にある景色の美しい湖。太湖ともいう )  煙波 ( もやのかかった水面 )

【講評】 形成力の的確な申し分の無い首席作品。