読み方
雨後の清風の夕べは、窓外に繊月流る。中宵も人は未 ( いま ) だ寝 ( い ) ねず。笛を吹きて独り楼に憑 ( よ ) れり。                          ― 武田梅竜作、居を移す ―
通釈
雨があがった後に、すがすがしい風が吹いて来る夕方は、窓の外に三日月が、大空の間を渡って行く。夜中になっても、きだ寝ないで起きている人がおり、笛を吹きながらただ一人で、高殿の手すりにもたれているのが見える。
語釈
武田梅竜 (1716 - 1766 。江戸中期の儒者。美濃の人 )  移居 ( 住居を移すこと ) 繊月 ( 細くなった月。三日月 ) 中宵 ( 夜なか )  憑 ( もたれること )

【講評】 字形・線質ともに優れた首席作品です。