「 集字聖教序 」




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およそ聞くところによれば、宇宙の二つの根本原理は形を持って

我々の目の前にある。すなわち万物を覆うもの ( 天 ) と、万物を戴せる

もの ( 地 ) という姿をもって、生きとし生けるものを包み込んでいる。

これに対し、春夏秋冬の時の移り変わりは目に見えず、寒暑の

ような諸々の現象の中に潜み込んで、万物を次々に変化させる。

そのために、天地を観察することについては、どんな凡庸なものでも

その一端を知ることができる。しかし、陰陽を洞察することについては、

どんな賢明なものでも、究極の運命を知り尽くすことはむずかしい。

このように天地が陰陽を包み込んでいるのにわかりやすいのは、

それが形を持っているからである

 

集字聖教序 ( 僧 懐仁 ( えにん ) 集王羲之書 )

碑の行数三十行、凡そ千九百有二字、碑は唐の六七二年に建立され、原石は西安碑林に現存する。

聖教序とは新約の仏教論に対して皇帝から賜った序文 ( 序・記 ) のことを総称して言う。

唐の長安弘福寺の僧懐仁が内府に伝わる王羲之の書の中より字を集め直接模勒した最も価値の高い書、

古来楷書を学ぶには醴泉・廟堂、行書は聖教・蘭亭と古今の定説とされ尊重されている。

六四八年に序記ができたがその後二十四年が経過して碑の竣工をみた。

王書の大小を比し、階行を連ね苦心惨憺の末、碑が完成したのである。