「 野路の梅 」

藤野弘子




(拡大)


野路の梅

風かぐはしく咲く日より
夏の緑のまさるまで
梢のかたに葉がくれて
人にしられぬ梅ひとつ
梢は高し手をのべて
えこそ觸れめやただひとり
わがものがほに朝夕を
ながめ暮してすごしてき
やがて鳴く鳥おもしろく
黄金の色にそめなせば
行きかふ人の目に觸れて
落ちて覆まるゝ野路の梅